チャプター 1
「お願い、ダイアナ……お父さんやお母さん、それにお兄ちゃんたちを責めないで! 全部、私のせいだから……」
ダイアナ・ヨークが返事をする間もなかった。乾いた音が部屋に響き、平手が頬を横切る。あまりの衝撃に顔の半分がたちまち痺れ、耳の奥がじんじんと鳴った。
叩いたのは誰か。実の父、ボーディ・ヨークだった。
「恩知らずめ! どうして俺の娘が、お前みたいに毒のある女になった! 妹は心臓が弱いのを知っているだろう! 手術を控えてるのに、よくも動揺させられるな!」
ダイアナは目を上げた。怒りに歪んだ父の顔の向こう、母と長兄に守られるように立つ少女――胸が裂けそうに泣きじゃくっている少女を見つめる。
六年前、ダイアナはローズウッドからヨーク家へ連れ戻された。あのときは嬉しくてたまらなかった。ようやく完全な家族を見つけた、血の繋がった人たちが自分を愛してくれるのだと信じたのだ。
だが六年という長い歳月で思い知らされた。養女のレイラ・ヨークと比べれば、自分は彼女の髪の一本にすら及ばないのだと。
ダイアナはただのレイラ専用の血液供給源。レイラの清らかな善良さを際立たせるための、闇の対比。必要とあらば差し出される、使い捨ての代用品。
今のように。
まるで自分がこの世でいちばん邪悪な人間であるかのように、家族全員が警戒と嫌悪の眼差しでダイアナを睨みつけた。レイラに危害を加えるのではないかと怯えながら。
「お父さん、ダイアナを叩かないで……」レイラは弱々しく言った。「私、ラッセル家に嫁ぐ……ルパート・ラッセルが昏睡状態でも、ヨーク家のためなら構わないの」
口にする言葉はすべて、ダイアナを利己的で自己中心的に見せるための、計算された後退だった。案の定、実母のベラ・ラヴィアンがすぐにレイラを抱き寄せ、守るように腕の中へ閉じ込める。
「レイラ、可愛い子! 何を馬鹿なことを言うの。あなたは心臓の手術を控えているのよ――そんな体で縁起担ぎのために結婚だなんてできるわけがないでしょう。あのルパート・ラッセルなんて、ほとんど死人同然よ。医者だって今月は持たないって言ってる。息をしているうちから未亡人になるために嫁ぐのと同じじゃない!」
長兄のイドリス・ヨークは、虫けらを見るような侮蔑をダイアナに向けた。「ダイアナ、恥というものがないのか? レイラはお前のために命を差し出す覚悟なんだぞ。ラッセル家はヨーク家の娘を名指しで求めてきた。お前が嫁がないなら、レイラを死なせる気か?」
その一語――「死」――が、この縁談の正体をあらわにしていた。
世界的金融帝国ラッセル・グループの総帥、ルパート・ラッセルは一年前に大事故に遭い、植物状態に陥っていた。
ラッセル家は数えきれないほどの名医にすがったが成果はなく、いつしか結婚が運を呼び、命を延ばすという迷信に取り憑かれた。
彼らが選んだのはヨーク家で、レイラこそが彼らの選んだ「福」だった。
ところが挙式日が迫った今になって、レイラは突然心臓発作を起こし、もう耐えられないと泣き出した。そうして、隅に追いやられ忘れ去られていた本当の娘――ダイアナが、代わりとして押し出されたのだ。
滑稽だ。
ダイアナは見ていた。家族が一枚岩となって自分に刃を向ける、その完璧な調和を。自分を敵と定めて結束する、その息の合い方を。
見つかって連れ戻されてからの六年間、彼らは一度でも自分を家族として扱ったことがあっただろうか。
レイラは何千もする高級ブランドのドレスを纏い、ダイアナは露店で買った服を着ていた。
レイラはピアノを弾き、バレエを習っていた。一方でダイアナは、家中の家事をすべてこなすのが当然だとされていた。
レイラが「具合が悪い」と囁きでもすれば、真夜中だろうと医者を呼びつける。だがダイアナが高熱を伴う肺炎で倒れたとき、彼らは「レイラへの献血から逃げるための仮病だ」と決めつけた。
レイラは母親の胸に顔を埋めながら、密かに視線だけを上げ、ダイアナへ挑むような、勝ち誇った目を投げつけた。
その一瞥が、言葉もなく勝利を告げていた。『ねえ、ダイアナ? あんたが見つかって連れ戻されたところで、何の意味があるの? ママもパパも、お兄ちゃんたちも、ずっと私のことだけを愛する。あんたなんて、いらない私生児でしかないんだから!』
戻ってきたことを後悔したか? いいえ。ダイアナが抱いたのは、嫌悪だけだった。
「いいわ。結婚する」
そう言い捨てると、相手に反応する暇すら与えず踵を返し、階段を上がって、自分の気配がほとんど残っていない小さな屋根裏部屋へ戻った。寝室というより物置に近い。
ダイアナの持ち物はほとんどない――小さなスーツケースが一つだけ。中には着替えが数着、養母が遺してくれた写真、それからまだ開発途中の小型医療ロボットが入っていた。
五歳のとき迷子になった彼女は、生体医工学を専門とする老教授に引き取られ、その知識のすべてを叩き込まれた。
血のつながりだの家族の絆だのという馬鹿げた幻想がなければ、六年ものあいだここへ戻ってきて、虐げられ続ける理由などあるはずがない。
扉が開き、イドリス・ヨークが入ってきた。彼は黒いカードをダイアナのベッドへ放り投げる。「この口座に五十万入ってる。補償だと思え。ダイアナ、親が冷酷だと恨むな。運が悪かったと思え。結婚したら大人しくしてろ。ヨーク家の恥になるな」
乞食を追い払うような口ぶりだった。
ダイアナはカードに目もくれない。「花嫁代金は全額よ。これで、あなたたちとは何の関係もなくなる」
「なんだその態度は? 警告しておくが、ラッセル家に嫁いだところで分際を越えた夢を見るな。全部レイラのおかげだろうが!」イドリスは唾を吐くように言い捨て、扉を乱暴に閉めた。
ダイアナは彼もカードも無視し、スーツケースのファスナーを下ろして、わずかな荷物を整え始めた。
再び屋根裏の扉が開いた。今度は次兄のダッシュ・ヨークだった。激情家のイドリスと違い、彼はいつも洗練され、優雅だった。金縁の眼鏡をかけた姿は、まるで一世紀前の紳士のように見える。
「ダイアナ」彼は温かい水の入ったグラスを手に近づき、穏やかな声で言った。「裁判所から戻ったばかりで、さっきのことを聞いた。イドリスは気が短い。気にするな」
「両親も今は混乱しているだけだ。でも、おまえを愛している。もし本当に結婚したくないなら、僕が代わりに言ってやる。ヨーク家の娘が金のために身を差し出す必要なんてない」
三人の兄の中で、次兄は昔からいちばん優しかった。ダイアナの体調を気にかけ、レイラへの献血で体が弱っているのではないかと心配してくれる、唯一の人――そう見えた。
心配そうな顔を見ているうちに、ダイアナは危うく信じそうになった。かつて自分には、ちゃんと自分を気にかけてくれる優しい兄がいたのだと――だが水を一口含んだ瞬間、味の違和感がはっきりとした。
医療訓練で鍛え上げられた感覚が、即座に警鐘を鳴らす。
ダイアナは顔を上げ、ダッシュ・ヨークを見据えた。「この水に、何を入れたの?」
