チャプター 272

ノーランのファイルには、要となる失敗サンプルが残されていた。それが研究の遠回りを一気に削り取る。

「第一段階、動物実験――完了」テディは光のスクリーンを食い入るように見つめ、興奮を隠せない。

白いマウスは、深宇宙放射線を模した環境下で三か月生存し、生理指標は正常域を保った。

「『キー』タンパク質の発現は霊長類でも安定。拒絶反応なし」

「出来すぎだ」年配の研究者は目を赤くする。「この十年、サルは半年も生かせなかったんだぞ」

ダイアナは表情ひとつ変えず、モデルの細部を指し示した。「腎臓への集積率が高すぎる。長期投与で代謝負荷が増す可能性がある。アテナ、タンパク質構造を最適化。腎臓への集積...

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