チャプター 36

ダイアナは携帯電話を握りしめ、受話口の向こうから降ってくるイドリスの思い上がった命令を黙って聞いていた。唇の端に、冷えた笑みがわずかに弧を描く。

「おとなしくしろ、ですって?」彼女は、その言葉を今年いちばんの冗談でも聞いたかのように繰り返し、くすりと笑った。「ヨークさん、忘れたの? たしかに私の姓はヨーク。でも、もうあなたの家族じゃない。私のことを、あなたが取り決める筋合いはないわ」

そう言い終えると、ダイアナはイドリスが怒鳴り散らす隙すら与えず、画面を軽く叩いて通話を切った――あまりにも端的で、容赦のない動作だった。

発信音が耳に響いた瞬間、イドリスは凍りついたように動きを止めた。信じ...

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