チャプター 78

イドリスは、妹を慰めるなどという考えはとうに捨てていた。視線を人波に走らせ、護衛を従えて立ち去ろうとしているミスター・Kの姿を捉える。

彼は素早くネクタイを正し、もっとも「それらしい」笑みを顔に貼りつけて歩み寄った。

「ミスター・K、少しお時間を」

護衛が前に出て行く手を塞ごうとしたが、銀の仮面の男がわずかに手を上げ、下がれと合図する。 

励まされるように、イドリスは名刺を差し出した。

「はじめまして。イドリス・ヨーク、ヨーク・グループの最高経営責任者です」控えめな笑みを添える。「当社はバイオメディカル分野に深い基盤があり、産業チェーンから市場チャネルまで一通り揃えております。以前よ...

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