第百六章

拓海は横目で彼女を一瞥し、少し苛立ちを滲ませた。

「順調だ。雪見博士の腕は確かだからな」

友里恵の顔に張り付いた笑みが、ぴくりと引きつる。

雪枝はページをめくる手をぴたりと止めた。

うつむいたまま、その長い睫毛をわずかに震わせる。だがすぐに何事もなかったかのように、再び活字に目を落とした。

まさかこれほど早く、あの拓海までもが絵里への評価を改めるとは思いもしなかったのだ。

そこへ弥優が外から戻ってきた。ひどく不機嫌そうな顔をしている。

彼女は椅子にどっかりと腰を下ろすなり、愚痴をこぼし始めた。

「店員が言うには、料理は全部上の階に運ばれちゃったんだって。注文し直したから、まだ...

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