第119章

「体育の時間にね、お友達と追いかけっこしてて、足を踏み外して階段から転げ落ちちゃったの」

直人は小さな手を伸ばして身振り手振りを交えながら、言葉を続けた。

「何段も転がったんだよ。でも僕、怖くなかったし、泣かなかったよ」

絵里は彼を見つめ、手を伸ばして額に触れてみたが、熱はない。

彼女は振り返り、窓辺に立つ悠太へ視線を向けた。

悠太はダークカラーのコートを着ており、その顔には幾分か疲労の色が滲んでいた。

「検査結果が出た」彼が口を開く。「軽い脳震盪だ。数日は病院で経過観察になる」

絵里は頷き、視線を戻した。

直人は彼女の手を握り、顔を上げて言った。

「ママ、僕平気だよ。ちょ...

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