第百六十五章

デスクの上には数冊の本が置かれ、その傍らにはきっちりとファイリングされた論文の束が並んでいる。

その本に見覚えがないはずがなかった。

昨日、会議室で絵里が推薦していたものだ。一冊残らず、すべて揃っている。

雪枝は呆然と立ち尽くした。

本と論文を見つめる彼女の指先が、微かに震えている。

その時、悠太の秘書がドアから入ってきて、雪枝の姿を認めるなり笑顔で声をかけた。

「小川さん、藤原社長に御用ですか? 急な会議が入ってしまいまして、少しお待ちいただくことになるかもしれません」

雪枝は視線を外し、何気ない風を装って尋ねた。

「机の上の本、藤原社長が買わせたの?」

秘書はデスクに目...

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