第212章

甘ったるい、柔らかい声。語尾が間延びしている。

絵里はふっと心が揺らぎ、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。

「ママ、来てよ。もうずっと会ってないんだよ」

直人の声がさらに沈み、少しすねたような響きが混じる。

絵里は心の中でため息をつき、口を開いた。

「分かったわ」

電話の向こうで、直人が「やったあ」と歓声を上げる。

「ママ大好き!」

「いつ行くの?」と絵里が尋ねる。

直人は弾んだ声で答えた。

「今だよ!」

絵里は一瞬呆気に取られた。

「今から?」

「うん、パパがママを迎えに行って、そのまま行くって言ってたもん」

絵里は即座に眉をひそめた。

「……パパに代わって」...

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