第32話

翌朝。出勤の準備を整えて1階へ降りた絵里は、兄の陽がすでに起きているのを見て驚いた。

いつもなら、陽はまだベッドの中だ。

こんな時間に起きているなんて、明らかに昨日のコンペの件を引きずっている。

「兄さん」絵里は歩み寄り、少し掠れた声で言った。「ごめんなさい、全部私のせいで……」

陽は新聞を置き、片手を上げて彼女の言葉を遮った。

「ストップだ」

その顔には、一瞬でいつもの自信に満ちた笑みが戻る。

「お前に何の関係がある? ビジネスの世界じゃ、こんなこと日常茶飯事だ。たかがプロジェクトの一つ、俺たち雪見家にとってはどうってことない。お前の兄貴は、そんなヤワじゃないぞ」

彼は絵里...

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