第45話

朝の光がフランス窓越しにマンションの部屋へ差し込んでいる。絵里はクローゼットの前に立ち、並んだスーツを指先でなぞり、最終的にダークグレーのスカートスーツで手を止めた。

今日は藤原グループへ提携の交渉に行かなければならない。

これもただの仕事だ――そう自分に言い聞かせた。

着替えを済ませ、薄くメイクを施すと、絵里は鏡の前に数秒間立ち尽くした。

鏡に映る女の目元は穏やかで、何の感情も読み取れない。上出来だ。

スマホが鳴った。晃からだ。

「雪見博士、下に着きました」

「ええ、すぐ行くわ」

晃の車は控えめな黒のベンツで、彼自身がハンドルを握っていた。

絵里は助手席のドアを開けて乗り...

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