第48話

朝六時。屋敷はまだ夜明け前の静寂に包まれていた。

絵里は最小限の荷物だけを手に、足音を忍ばせて階段を下りた。

直人の部屋の前を通りかかったとき、ふと足を止め、わずかに開いたドアの隙間から中を覗き込んだ。

子どもはぐっすりと眠っている。小さな顔を枕に埋め、規則正しい寝息を立てていた。

視線を外し、再び階段を下りる。

リビングにいた使用人が彼女を見て、目を丸くした。

「若奥様、こんなに朝早くからお出かけですか」

「研究室で用事があるの」

絵里は短く答え、扉を押し開けて朝靄の中へと歩み去った。

それからの数日間、彼女は仕事が忙しいことを理由に研究室の上の階にある宿舎に泊まり込み、...

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