第51話

背後から、微かな足音が近づいてきた。

絵里は振り返らなかった。

「雪見博士」背後で晃の声がした。「一人で夜風に当たっているんですか」

彼女は答えず、ただ遠くを見つめていた。

晃は彼女のそばへ歩み寄り、同じように手すりに寄りかかった。絶妙な距離感を保ったまま。

彼はそれ以上追及することなく、ただ静かに彼女と並んで、彼方の灯りを眺めていた。

長い沈黙の後、ようやく絵里が口を開いた。

「橘さん」彼女はぽつりと呟いた。「人って、どれだけ失望を重ねたら、本当に諦めがつくんでしょうね」

晃は横を向き、彼女を見た。

月光に照らされた横顔の輪郭は柔らかいのに、その瞳の奥には、ひどく暗く冷た...

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