第52話

夕方六時。絵里の車は時間通りに実家の鉄門をくぐった。

屋敷にはすでに明かりが灯っていた。薄暗くなりつつある空を背景に、窓という窓から漏れ出す暖かなオレンジ色の光は、どこか家庭的な温もりを感じさせる。

車を停め、直人のために買ったプレゼントを手に、絵里はその重厚な玄関の扉を押し開けた。

玄関の照明が降り注ぐ中、奥のリビングからはテレビの音が聞こえてくる。

靴を脱ぎ終えた途端、小さな影が駆け寄ってきた。

「ママ!」

直人が弾んだ声で胸に飛び込んでくる。両手で絵里の脚にぎゅっとしがみつき、見上げた小さな顔は喜びで満ちていた。

絵里は彼を見下ろした。胸の奥のどこかが、ふっと柔らかく揺さ...

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