第56話

その夜、悠太は帰ってこなかった。

翌日の朝食時、奈央の顔色は明らかに優れなかった。

ダイニングテーブルにつくと、彼女は絵里をちらりと見て、一つため息をついた。

「悠太、昨夜も帰ってこなかったわね」不満を滲ませた声で言う。「いくら仕事が忙しいからって、家に帰らないなんてあり得ないわ。結婚しているのに、みっともない」

絵里はうつむいたままミルクを飲み、何も答えなかった。

奈央は探るような目を向けてくる。「絵里さん、あなたからも少し言ってやったらどうなの? 夫婦なんだから、ちゃんと話し合えばいいじゃない」

絵里はグラスを置き、奈央の視線を受け止めて微笑んだ。

「お母さん、彼の仕事が忙...

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