第64章

会場は一瞬静まり返り、直後にざわめきと低いため息が巻き起こった。

「あの子、誰?」

「藤原グループの、藤原社長のお連れ様よ」

「あんなに気前よく金を出して、二人はどういう関係なの? 藤原社長って既婚者じゃなかった?」

ひそひそと囁き合う声が、あちこちから聞こえてくる。

雪枝はわずかに顔を向け、自分を見る者たちを流し目で一瞥すると、得意げに口角を吊り上げた。

見てるかしら、絵里。これこそが私の『余裕』よ。

隣に座る悠太は涼しい顔をしており、何の反応も示さない。

数回の競り合いの末、それ以上札を上げる者は出なかった。オークショニアの木槌が振り下ろされる。

「三番のお客様、五千万...

ログインして続きを読む