第65章

オークションが終わり、人々が次々と会場を後にする。

絵里は人の波に乗って出口へ向かいながら、ただまっすぐ前だけを見ていた。あの方向には、一度たりとも視線を向けない。

会場を出ると、冬の冷たさを孕んだ夜風が頬を撫でた。

絵里は深く息を吸い込み、足早に立ち去ろうとしたその時、背後から玲奈の声が呼び止めた。

「絵里、ちょっと待って」

振り返ると、玲奈が見知らぬ男と立ち話をしている。先ほど雪枝と競り合っていた、あの晧一だった。

玲奈は小走りで駆け寄り、絵里に笑いかけた。

「知り合いに会っちゃって、少し話してたの」

晧一も後からついてくる。数歩離れた位置に立ち、興味深げな視線を絵里に向...

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