第84章

食事を終え、絵里は晃と別れた。

「気をつけて」晃は手を振る。

「うん」絵里は頷き、自分の車に乗り込んだ。

エンジンがかかり、車は車の波に紛れ、すぐに街角へと消えていった。

晃はその場に立ち尽くし、車が消えた方向を数秒間見つめていた。

再びスマホが鳴る。

また晧一からだ。

画面に表示された名前を一瞥し、わずかに眉をひそめてから通話ボタンをタップした。

「白壁社長、何の用だ」

晧一の声には、どこか人を食ったような笑みが混じっていた。

「橘さん、今夜空いてる? パーッとやろうよ。いい店押さえてあるんだ」

晃はすかさず答えた。

「暇はない」

電話の向こうで、わずかな間が空く...

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