第八十八章

絵里は彼を見つめ、数秒ためらった後、こくりと頷いた。

「いいわ」

広光は晧一の隣に立ち、その光景を目にして彼の腕を小突いた。

「晧一、見ろよ。斯言のやつ、あの絵里って女に気があるんじゃないか?」

晧一も当然それに気づいており、思わず鼻で笑った。

「見る目がないな」

広光は何も返さず、ただダンスフロアの二人の姿を物思いに沈むような目で見つめていた。

雪枝も当然、その光景を視界に収めていた。

彼女は拓海のそばへ歩み寄り、尋ねた。

「拓海、絵里と踊ってるあの男、誰?」

拓海は彼女の視線を追う。

「重正だよ」と彼は答えた。「草地家の長男で、草地グループの現在のトップだ。今月、海...

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