第51章 ウェンディに甘い

 ルカの急ブレーキに、オリヴィアはびくりと身をすくめた。

 窓ガラスへ身を寄せ、シートベルトをきつく握りしめる。

 胸の奥が、得体の知れない何かに押し潰されるみたいに重い。息を吸うだけで不快だった。ルカは苛立ちをやり場なく、オリヴィアへ手を伸ばすと顎をつかみ、無理やりこちらへ向かせた。

 冷えた瞳に、かすかな嘲りが浮かぶ。

「……まだ何かあるの?」

 何がしたいのか、自分でもわからない。

 ただ、こんなふうに淡々としてほしくなかった。ほかの男のために言い返し、平然と自分の向こう側に立たれるのが耐えられない。

 耐えられない。

 衝動のまま、ルカは身をかがめ、唇を奪った。

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