第91章 薬

車が目的地まで半分ほど来たところで、ルカのスマホが不意に鳴った。画面に表示された名前は、ウェンディ。

ルカは眉をひそめ、そのまま通話ボタンを押す。

「ルカ、いつ帰ってくるの?」

ウェンディの声は甘ったるく、露骨に媚びていた。

「今日は私の誕生日だよ。みんな、ルカを待ってるの」

「こっちは重要な用件がある。今は戻れない」

冷えた声。指先はスマホを握り潰すほど強く、関節が白く浮いた。

電話の向こうで、甘えの勢いがすっと萎む。

「重要な用件? 私の誕生日より大事なの? ルカ、今まで一度も、私をひとりで誕生日にしなかったのに……」

「オリヴィアの手がかりだ」

ルカは余計な前置きを...

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