第104章

壁に寄りかかり、息子のその笑顔を見つめる付美月の胸は、ぎゅっと締めつけられた。

彼女は和也へ視線を移し、かすれた声で紡ぐ。

「一ノ瀬さん、ありがとうございます。あなたがいてくれなかったら、私、どうなっていたか……」

和也は振り返らず、鍵盤の上で指を滑らせ続けている。

「気にしないでください」

淡々とした声が響く。

「晴太くんには才能がある。彼には何の問題もありません。問題があるのは、周りの人間の方です」

窓から差し込む陽光が、ピアノを、和也の指先を、そして晴太の小さな肩を優しく照らしている。

晴太はそこに座り、静かにピアノの音色に耳を傾けていた。

音楽教室には、まだメロディ...

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