第29章

晴人は美月の首筋に顔を埋め、荒い息を吐いていた。むせ返るような酒の匂いと熱い吐息が、彼女の肌を焼きつける。

手首を掴む彼の指は、強くなったり弱くなったりと力加減が定まらない。

まるで、彼女が逃げてしまうのを恐れているかのように。

「離婚……しな……!」

くぐもった声で、彼が再び曖昧に呟く。

だが、ひどく酔い潰れているせいで完全に呂律が回っておらず、言葉の輪郭が水に滲んだようにぼやけていた。

あまりにも不明瞭なその響きの中で。

美月の耳に届いたのは、やけにはっきりと発音された「離婚」の二文字だけだった。

彼女は思った。

彼が、承諾したのだと。

「……わかった」

美月は小さ...

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