第35章

美月は晴太を抱き締めていた。小さな腕が彼女の首に巻きつき、顔は肩口に埋もれている。

「ママ」

晴太が突然、彼女を呼んだ。

美月は不思議そうに彼を見つめる。

晴太の目はまだ赤く、まつげには乾ききっていない涙の粒が光っていたが、それでも笑っていた。

ママを心配させまいと、一生懸命に作った笑顔。

『ママ、ぼく、だいじょうぶ』

彼は手話を切った。ゆっくりと、一つひとつの動作を確かめるように。

『パパがせっかくあそびにつれてきてくれたから、がっかりさせたくないの。ぼく、もっとパパとあそびたい』

美月は鼻の奥がツンとして、危うく涙がこぼれそうになった。

まだ四歳だというのに、胸が痛く...

ログインして続きを読む