第40章

美月は晴太を抱きかかえ、歩道を歩いていた。

タクシーを拾うつもりだったが、途中で少しばかり予定外のことが起きた。

『ママ、あっちから音がする!』

晴太がふいに彼女の指を引っ張り、小さな手で脇道を指さした。

手話ではあったが、息子の興奮が美月にもはっきりと伝わってくる。

美月は彼が指し示す方向へ視線を向けた。

脇道の突き当たりは湿地公園になっており、奥からかすかにピアノの音色が漂ってくる。

水が流れるような、柔らかく澄み切った旋律だった。

美月は息子を地面に下ろした。

晴太はすっかり興奮している。

美月の手を離すと、ぴょんぴょんと跳ねるように駆けだした。小さな革靴が木の板を...

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