第74章

若菜はすぐさま湯呑みを置き、立ち上がった。薇々も母親に続いて腰を浮かせる。

二人とも、何か言おうと口を開きかけた。

だが、樹の視線がすっと薙ぎ払うように向けられた。

無造作でいて、霜のように冷ややかな眼差し。

若菜は途端に言葉を呑み込み、あまつさえ再び席に座り込んでしまう。

薇々も唇を噛み、それに倣って腰を下ろした。

晴人は陽菜の顔についた引っかき傷を目にすると、彼女に歩み寄り、しゃがみ込んだ。

間近で見ると、白く柔らかな小さな顔に走る赤い筋が、ひどく痛々しい。

彼が手を伸ばし、そっと触れると、陽菜は痛みに身をすくませ、さらに激しく泣きじゃくった。

「うわぁぁん……」

晴...

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