第86章

美月は、彼が和也のことを聞いているのだとわかっていた。

首を横に振り、こう答える。

「あまり親しくないの」

「以前、晴太が音楽会で何度か会って、その時に助けてもらったことがあって」

「でも、私は彼と親しいわけじゃないわ」

少し間を置いて、さらに付け加える。

「この後、保護者会が終わったら彼に会いに行くつもり。晴太のことで、もう少し力を貸してもらいたいから」

美月の言葉に対し、樹はそれ以上何も聞かなかった。ただ彼女をちらりと見つめ、頷き、少し不機嫌そうに「うん」とだけこぼした。

それからは、もう何も口にしなかった。

彼の視線は彼女の顔から外れ、遠くのグラウンドへと落ちる。

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