第1章

今日は完璧な一日になるはずだった。瑠奈の初めての誕生日なんだから。でも、母さんが何かやらかすって、わかっておくべきだったんだ。

そんなわけで、私は美流ヶ丘カントリー倶楽部で、瑠奈のパーティーの準備をしていた。ピンクの風船、白いテーブルクロス、準備は万端。何週間も前から計画してきたんだ。

でも、母さんの様子がおかしかった。なんていうか、すごく変だった。

五秒おきにスマートフォンを確認しては、まるでそれが命綱かのように、大きなハンドバッグを手放さない。それに、最近やけにひそひそとした電話をかけていた。

『何かある。そんな予感がした』

「おい、大丈夫か?」海翔が歩み寄ってきて、私の肩をさすった。「ちょっとストレス溜まってる顔してるぞ」

私は肩をすくめた。「ただ、全部うまくいってほしくて」

彼は私に微笑みかけると、彼の母親の腕の中であーうーと声を上げている瑠奈に目をやった。「きっと喜ぶさ」

ああ、本当にこの人が好きだ。結婚して三年になるのに、今でも胸がときめく。

人々が集まり始め、私は嫌な予感を振り払おうと努めた。母さんはいつものように、あちこち動き回って、みんなとおしゃべりしている。相変わらず素敵だ。ブランドもののドレスに、完璧なヘアスタイル。誰もが母さんのことを、最高の「おばあちゃん」だと思っている。

でも、本当は違うって、私は知っている。

「さあ、皆さん、選び取りの時間ですよ!」と美智子さんが呼びかけた。赤ちゃんが何かを手に取って、それで将来を占うっていう、あれだ。瑠奈はこれからハイハイして、目に付いたものをつかむことになる。

私は瑠奈をブランケットの上に降ろした。周りには本、五百円玉の硬貨、おもちゃの聴診器など、小物が散らばっている。瑠奈はきゃっきゃと笑いながら、いろんなものに手を伸ばし始めた。すごく可愛らしい光景だった。

その時、母さんが一歩前に出た。

「ちょっと待って、聖良ちゃん。瑠奈ちゃんに選んでもらいたい、特別なものがあるのよ」

胃がずしりと重くなった。「どういうこと?」

母さんはあのハンドバッグに手を突っ込むと、一つの封筒を取り出した。病院のロゴが入っている。母さんは笑っていたけれど、それは優しい笑顔ではなかった。

「これで、この子の本当の父親が誰だかわかるわ!」

え、何?

「お母さん、何言ってるの?」私の声が上ずってしまった。

母さんはまるで舞台の上にいるかのように、部屋中を見渡した。「皆さん、こんな形で知られることになってしまってごめんなさいね。でも、聖良はずっと私たちを騙していたの」

会場は水を打ったように静まり返った。文字通り、人々の息遣いまで聞こえるほどに。

母さんは芝居がかった仕草で封筒を開けた。「DNA鑑定の結果、風間海翔は風間瑠奈の実の父親ではないことが証明されました」

すべてが、崩壊した。

「聖良……」海翔が私の方を向く。その顔は……ただ、ひたすらに傷ついていた。「嘘だと言ってくれ。俺たちの娘のことで、嘘をついたなんて言わないでくれ」

「嘘よ!」私はほとんど叫んでいた。「母さんがでっち上げたのよ! 海翔、お願い、私を信じて!」

でも、彼は私から後ずさりしていく。そして周りの人たちは、スマートフォンを取り出していた。

「どうして、あんなものをでっち上げるなんて……」美智子さんが囁いた。

母さんは続けた。「何ヶ月も前から怪しいと思っていたの。時系列がどうにも合わないし。それに、瑠奈ちゃんの目を見てごらんなさい――海翔さんの青い目じゃなくて、聖良と同じ緑色じゃないの」

人々はもう、このめちゃくちゃな状況をネットに投稿している。通知が雪崩のように増えていくのが見えた。

「そんなまさか……」海翔は首を振り、バルコニーの方へ歩き始めた。「有り得ない、噓だ」

「海翔、待って!」私は彼の後を追った。

バルコニーからは三階下の庭園が見下ろせた。普段はきれいな場所なのに、今はただ恐ろしく見えた。

「お願い、話を聞いて」私は彼の腕をつかんだ。「母さんは嘘を言ってるの。理由はわからないけど、嘘なのよ。私のこと、わかるでしょ。私がそんなことするはずないって、わかるでしょ」

彼は荒んだ目で私を見た。「本当に? 今の俺には、何もわからない」

みんなが私たちの後を追って外に出てきていた。まだ撮影を続けている。母さんの声が、混沌としたざわめきの中で響き渡った。「事を荒立てたくはなかったのだけれど、時には真実を明らかにしなければならないこともあるのよ……」

海翔は、永遠に感じられる時間、私をじっと見つめていた。その瞳に浮かぶ痛みが、私を殺していく。

そして彼は、手すりの上に登った。「そっだ、これは、夢だった、目覚めれば、全てが……」

「やめて!」私は飛びかかったが、もう遅かった。

彼は、いなくなった。

あっという間に。

人々の悲鳴が上がる。誰かに突き飛ばされたのか、それとも、もう立っていられなかったのか。背中に手すりがぶつかり、そして私も、落ちていった。

『全部、母さんが計画したんだ。私たちを殺すために』

だが次の瞬間、はっと息を呑んで、私はベッドの上で身を起こした。

ベビーベッドで瑠奈が泣いている。時計は午前三時を指していた。海翔はすぐ隣で、穏やかで規則正しい寝息を立てている。

スマートフォンの画面には、二〇二四年三月十五日と表示されていた。

パーティーの一週間前だ。

震える手でスマートフォンをつかみ、SNSを開く。そこにあった――昨日の母さんの投稿。プレゼントの包装紙の写真に、「サプライズと秘密」についての、謎めいたキャプションが添えられていた。

これから何が起こるかなど知る由もない人々からの、幸せなコメントが並んでいる。

瑠奈の泣き声が大きくなるまで、私はその画面を睨みつけていた。そして、気づいた。

これは現実だ。私は、戻ってきたんだ。

前の私だったら、パニックになって母さんに話をしにいって、やめてくれるように懇願しただろう。

でも、今の私は? 夫が死ぬのを目の当たりにした私は?

いや。二度とあんなことは起こさせない。

私には七日間ある。家族を救うための、七日間が。

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