母が私の娘のDNA鑑定を偽造した

母が私の娘のDNA鑑定を偽造した

間地出草 · 完結 · 20.3k 文字

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紹介

私の母、美園蘭子(みその らんこ)は、娘の初めての誕生日祝いに、まるで凶器のようなものをバッグに忍ばせてやって来た。
もちろん本物の武器ではない──もっと残酷なものだ。
それは、私の娘風間瑠奈(かざま るな)が夫風間海翔(かざま かいと)の子ではないと示す、偽造されたDNA鑑定書だった。

母は、その場に集まった友人や近所の人たち、そしてスマホで撮影している人々の前で、私たち家族を壊そうとした。
そして、彼女の望みは叶った。

海翔は打ち砕かれ、その場でカントリー倶楽部のバルコニーから身を投げた。
私は彼を追い、庭園に広がる血の中で息絶え、母の満足げな笑い声を聞いた。

だが、死は私に贈り物をくれた──七日間の巻き戻し。

今度は準備万端だ。本物のDNA鑑定、汚れた家族の秘密、そして誰も知らなかった実の父親。
母が「父性鑑定」で遊びたいと言うなら──いいだろう。

彼女の家にずっと住んでいた「誰かの隠し子」が誰なのか、知った時の顔が楽しみだ。

チャプター 1

  今日は完璧な一日になるはずだった。瑠奈の初めての誕生日なんだから。でも、母さんが何かやらかすって、わかっておくべきだったんだ。

 そんなわけで、私は美流ヶ丘カントリー倶楽部で、瑠奈のパーティーの準備をしていた。ピンクの風船、白いテーブルクロス、準備は万端。何週間も前から計画してきたんだ。

 でも、母さんの様子がおかしかった。なんていうか、すごく変だった。

 五秒おきにスマートフォンを確認しては、まるでそれが命綱かのように、大きなハンドバッグを手放さない。それに、最近やけにひそひそとした電話をかけていた。

 『何かある。そんな予感がした』

 「おい、大丈夫か?」海翔が歩み寄ってきて、私の肩をさすった。「ちょっとストレス溜まってる顔してるぞ」

 私は肩をすくめた。「ただ、全部うまくいってほしくて」

 彼は私に微笑みかけると、彼の母親の腕の中であーうーと声を上げている瑠奈に目をやった。「きっと喜ぶさ」

 ああ、本当にこの人が好きだ。結婚して三年になるのに、今でも胸がときめく。

 人々が集まり始め、私は嫌な予感を振り払おうと努めた。母さんはいつものように、あちこち動き回って、みんなとおしゃべりしている。相変わらず素敵だ。ブランドもののドレスに、完璧なヘアスタイル。誰もが母さんのことを、最高の「おばあちゃん」だと思っている。

 でも、本当は違うって、私は知っている。

 「さあ、皆さん、選び取りの時間ですよ!」と美智子さんが呼びかけた。赤ちゃんが何かを手に取って、それで将来を占うっていう、あれだ。瑠奈はこれからハイハイして、目に付いたものをつかむことになる。

 私は瑠奈をブランケットの上に降ろした。周りには本、五百円玉の硬貨、おもちゃの聴診器など、小物が散らばっている。瑠奈はきゃっきゃと笑いながら、いろんなものに手を伸ばし始めた。すごく可愛らしい光景だった。

 その時、母さんが一歩前に出た。

 「ちょっと待って、聖良ちゃん。瑠奈ちゃんに選んでもらいたい、特別なものがあるのよ」

 胃がずしりと重くなった。「どういうこと?」

 母さんはあのハンドバッグに手を突っ込むと、一つの封筒を取り出した。病院のロゴが入っている。母さんは笑っていたけれど、それは優しい笑顔ではなかった。

 「これで、この子の本当の父親が誰だかわかるわ!」

 え、何?

 「お母さん、何言ってるの?」私の声が上ずってしまった。

 母さんはまるで舞台の上にいるかのように、部屋中を見渡した。「皆さん、こんな形で知られることになってしまってごめんなさいね。でも、聖良はずっと私たちを騙していたの」

 会場は水を打ったように静まり返った。文字通り、人々の息遣いまで聞こえるほどに。

 母さんは芝居がかった仕草で封筒を開けた。「DNA鑑定の結果、風間海翔は風間瑠奈の実の父親ではないことが証明されました」

 すべてが、崩壊した。

 「聖良……」海翔が私の方を向く。その顔は……ただ、ひたすらに傷ついていた。「嘘だと言ってくれ。俺たちの娘のことで、嘘をついたなんて言わないでくれ」

 「嘘よ!」私はほとんど叫んでいた。「母さんがでっち上げたのよ! 海翔、お願い、私を信じて!」

 でも、彼は私から後ずさりしていく。そして周りの人たちは、スマートフォンを取り出していた。

 「どうして、あんなものをでっち上げるなんて……」美智子さんが囁いた。

 母さんは続けた。「何ヶ月も前から怪しいと思っていたの。時系列がどうにも合わないし。それに、瑠奈ちゃんの目を見てごらんなさい――海翔さんの青い目じゃなくて、聖良と同じ緑色じゃないの」

 人々はもう、このめちゃくちゃな状況をネットに投稿している。通知が雪崩のように増えていくのが見えた。

 「そんなまさか……」海翔は首を振り、バルコニーの方へ歩き始めた。「有り得ない、噓だ」

 「海翔、待って!」私は彼の後を追った。

 バルコニーからは三階下の庭園が見下ろせた。普段はきれいな場所なのに、今はただ恐ろしく見えた。

 「お願い、話を聞いて」私は彼の腕をつかんだ。「母さんは嘘を言ってるの。理由はわからないけど、嘘なのよ。私のこと、わかるでしょ。私がそんなことするはずないって、わかるでしょ」

 彼は荒んだ目で私を見た。「本当に? 今の俺には、何もわからない」

 みんなが私たちの後を追って外に出てきていた。まだ撮影を続けている。母さんの声が、混沌としたざわめきの中で響き渡った。「事を荒立てたくはなかったのだけれど、時には真実を明らかにしなければならないこともあるのよ……」

 海翔は、永遠に感じられる時間、私をじっと見つめていた。その瞳に浮かぶ痛みが、私を殺していく。

 そして彼は、手すりの上に登った。「そっだ、これは、夢だった、目覚めれば、全てが……」

 「やめて!」私は飛びかかったが、もう遅かった。

 彼は、いなくなった。

 あっという間に。

 人々の悲鳴が上がる。誰かに突き飛ばされたのか、それとも、もう立っていられなかったのか。背中に手すりがぶつかり、そして私も、落ちていった。

 『全部、母さんが計画したんだ。私たちを殺すために』

 だが次の瞬間、はっと息を呑んで、私はベッドの上で身を起こした。

 ベビーベッドで瑠奈が泣いている。時計は午前三時を指していた。海翔はすぐ隣で、穏やかで規則正しい寝息を立てている。

 スマートフォンの画面には、二〇二四年三月十五日と表示されていた。

 パーティーの一週間前だ。

 震える手でスマートフォンをつかみ、SNSを開く。そこにあった――昨日の母さんの投稿。プレゼントの包装紙の写真に、「サプライズと秘密」についての、謎めいたキャプションが添えられていた。

 これから何が起こるかなど知る由もない人々からの、幸せなコメントが並んでいる。

 瑠奈の泣き声が大きくなるまで、私はその画面を睨みつけていた。そして、気づいた。

 これは現実だ。私は、戻ってきたんだ。

 前の私だったら、パニックになって母さんに話をしにいって、やめてくれるように懇願しただろう。

 でも、今の私は? 夫が死ぬのを目の当たりにした私は?

 いや。二度とあんなことは起こさせない。

 私には七日間ある。家族を救うための、七日間が。

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けれど最後に彼が選んだのは、私ではなく、彼の初恋の女性だった。

夫は、私の心を深く傷つけただけではない。あの女が私の大切なジュエリーデザインを盗むことを許し、さらには実の息子までも操って、私を「怪物」だと思わせた。

嘘で塗り固められた結婚生活の中で、私は少しずつ自分を失っていった。

息が詰まるような日々。愛されていると思い込んでいた時間。すべてが偽りだった。

けれど、彼らはひとつだけ間違えた。

私を、もう戻れないところまで追い詰めたこと。

私が去ると決めたあの日。

私は、最低な夫も、母親への感謝を忘れた息子も、そして彼らによって壊された過去の自分も、すべて置き去りにした。

親友の支え。そして、私の本当の価値を見抜き、才能を認めてくれたある若き実業家との出会い。

その温かな手によって、私はもう一度、自分自身を取り戻した。

失った誇りを取り戻し、眠っていた才能を開花させ、世界へ羽ばたくデザイナーとして新たな人生を歩み始めた。

今、私の作品は世界の舞台で輝いている。

一方で、かつて私を捨てた男は、跪いて許しを乞う。

「戻ってきてくれ」と。

けれど、もう遅い。

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もう二度と、過去には戻らない。
今さら帰ってこいと言われても遅い!

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