第3章

二日後、瑠奈に昼ごはんを食べさせていると、スマホが鳴った。

「風間さんでいらっしゃいますか? 父子鑑定の結果が出ております」

心臓が耳元で鳴り響くように脈打ち始めた。「すぐ伺います」

研究所までの道のりが、永遠のように長く感じられた。結果は分かっている、そう自分に言い聞かせ続けた。それでも――。

技師が封のされた封筒を渡してきた。「ご依頼のものはすべてこの中に」

車に戻るまで、封筒を開けるのは待った。

黒木哲郎――父権確率:0.00%

『分かっていたはずなのに、こうして白黒はっきり文字にされると、やはり衝撃は大きかった』

やはり、篤志は父さんの息子ではなかったのだ。母は、三十年以上も嘘をつき続けてきた。

どうりで。父さんが篤志に対して、どこか一線を引いているように見えたわけだ。誰かが二人の見た目が似ていないことに触れるたび、母があんなにムキになっていた理由も、これで分かった。

次は、仁を見つけなければ。

家に戻り、ノートパソコンで母の出身大学を調べる。同窓会のウェブサイトには、何十年も前の卒業アルバムの写真が載っていた。一時間ほどかかったが、母の卒業クラスを見つけ出した。

いた。棘原仁。こんなに小さな写真でも、篤志の面影があるのがはっきりと分かった。

次はフェイスブックだ。仁は驚くほど簡単に見つかった。プロフィールは全体公開。隠すことが何もないからか。それとも、失うものがもう何もないからか。

彼の最近の投稿は、まさにどん底生活のハイライトだった。支払えない医療費への不満。安っぽいモーテルの部屋の写真。今年三度目となる「一時的な求職中」という投稿。

この男は、相当切羽詰まっている。私にとっては、それこそが好都合だった。

フェイスブックの偽アカウントを作り、彼にメッセージを送った。『はじめまして。大学時代にあなたがお作りになったお子さんについて、情報を持っています』

返信は十分も経たずに来た。

『誰だ? 子供とは何のことだ? 今すぐ詳しく教えろ!』

見事に食いついてきた。

母のフェイスブックから拝借した篤志の最近の写真を送る。『この子に見覚えは? 一九九三年四月生まれです』

画面越しにも、その興奮が手に取るように感じられるほどの即レスだった。

『なんてこった……俺の小さい頃にそっくりだ。まさか、蘭子が俺の息子を産んでいたっていうのか?』

『その通りです』

『なぜあんたがこんなことを? 何が望みだ?』

いい質問だ。ここは慎重にいかなければ。

『彼は真実を知るべきだと思っています。そして、あなたも彼に会う権利があるはずです』

『息子はどこにいる? どうすれば会えるんだ?』

『三月二十二日に、親族の集まりがあります。もしご自分の息子さんに会いたいのであれば、それがチャンスです』

カントリークラブの住所を伝え、午後三時に来るように指示した。

『信じてください。タイミングは完璧ですから』

この面倒事を仕込みながら、私はもう一つのプロジェクトにも取り組んでいた。このパーティーでのサプライズは、母の偽のDNA鑑定書だけではない。

私は再び研究所へ行き、レターヘッドの書式を頼んだ。「書類を合わせるために必要なんです」と告げる。ちょっとした嘘だが、どうでもいい。

そして、本物の鑑定結果を使って、私自身のバージョンを作り上げた。黒木哲郎と黒木篤志、はっきりと示された父権確率:0.00%

書類を偽造する、という手は、そちらだけの専売特許じゃない。

パーティー前夜、瑠奈を寝かしつけていると、すべての実感がこみ上げてきた。

「パパは瑠奈のことが大好きだよ」眠りに落ちていく娘の額にキスをする。「明日、私たちの家族を二度と誰も傷つけられないようにするからね」

私が寝室に入ると、海翔はもうベッドに入っていた。

「最近、なんだか様子が違うね」彼は私を近くに引き寄せながら言った。

「どう違うの?」

「分からないけど。もっと……集中してる、っていうか。何か大きなことを企んでるみたいだ」

『その通りだなんて、言えるはずもない』

「明日は、ちょっと大変なことになるかもしれない」私は慎重に言葉を選んだ。「でも、前に話したこと、覚えてる? 何があっても、私を信じてくれるって」

「もちろん」彼は私のこめかみにキスをした。「大丈夫なのか?」

「何か疑問を呈する人がいたら、私たちのDNA鑑定書があるから」私は軽い口調を保った。「それだけ覚えておいて」

彼は静かに笑った。「変なこと言うんだな。でも、分かったよ。信じてる」

『彼に気づかれないように、心の準備をさせている。そして、トラブルが来た時、彼はきっとこの会話を思い出すはずだ』

彼が眠りについた後、私は横になったまま、これから起ころうとしているすべてのことに思いを巡らせた。

母は、自分の嘘で私の家族を破壊するつもりでいる。自分が仕掛けた罠に、自ら足を踏み入れようとしていることなど、知る由もない。

私は、母のようになってしまったのだろうか? 人を利用し、状況を操る。

違う。そこには決定的な違いがある。

母は嘘で攻撃する。私は真実で防御する。

母は金のために罪のない人々を傷つけようとした。私は、すでに私たちを殺そうとした人間から、自分の家族を守っているだけだ。

明日、仁が息子を探しに現れる。母は偽のDNA鑑定書を取り出すだろう。そして私は、彼女の世界すべてを粉々にする本物の鑑定結果を手に、準備万端で待っている。

何より素晴らしいのは、母がほとんど自ら墓穴を掘ってくれることだ。

あとは、彼女が自らの人生を破滅へと導く様を、静かに見届けるだけだ。

前のチャプター
次のチャプター