第6章

仁があの部屋に足を踏み入れた瞬間、母の世界が崩壊するのを私は悟った。

彼の声を聞いた母は、顔から血の気が引き、真っ白になった。まるで亡霊が目の前に現れたかのように、動くこともできなかった。

ある意味、その通りだった。

「仁……うそ、どうしてここに。今、こんな時に……」

やはり、彼のことを覚えていた。面白い。

「三十年前にここに来るべきだったんだ!」仁の声が大きくなる。「お前は俺たちの息子のことを、一度も教えなかった!」

篤志は二人を交互に見つめている。「待って……あんたが、俺の……本当の父親だって言うのか?」

「その通りだ、坊主」

父さんは、まるで胸の奥を...

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