32。なじみのない領域

ダコタ・ブラック

ガラスのドアが軽やかなチャイムの音とともに開き、俺は見慣れない領域へと足を踏み入れた。間違いなく、高価な場所だ。

その空間は、思わず少し背筋を伸ばしてしまうような、優雅さと高級感を放っている。隅には豪華な家具が飾られ、中央には目を引くガラス張りのテーブルが置かれている。

俺はあたりを見回す。『ダイヤモンド』。買い手を感心させるために、ことさら努力する必要のない類の商品だ。

「ティファニーへようこそ」販売員の女性が、手慣れた笑みを浮かべて近づいてくる。彼女の視線が俺の腕時計、スーツ、靴を素早く走り、おそらく年収を値踏みしているのだろう。

「どのようなものをお探しでしょ...

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