34。ゼロ・セルフ・リスペクト

ダコタ・ブラック

「エマラ」

階段に向かって歩いていく彼女を見つけるなり、俺は声をかけた。

彼女は歩みを止め、振り返る。俺の姿を認めると、その目はこれ見よがしにぐるりと一回転したが、俺は姿勢を正し、肩を張ったまま、大股で彼女へと向かっていく。

「今度は何よ?」と彼女は訊ねる。その声色はいつもの、『話しかけないで、この鬱陶しいサル』とでも言いたげなものだ。

「君に何かしてほしいわけじゃない」俺はそっと囁く。「でも、君にあげたいものがあるんだ」ポケットからティファニーの小さな包みを取り出すと、指が神経質に震えた。

俺がそれを手渡すと、ヘーゼル色の瞳がその青い箱に釘付けにな...

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