5。ストレート・トゥ・ザ・ポイント

ダコタ・ブラック

エマラ……猫みたいに意地っ張りな女だ。

遠くから彼女を見つめながら、思わず笑みがこぼれた。今頃、あそこで俺を睨みつけているんだろうな。

俺のスピーチが彼女に向けられたものだと、もう気づいているはずだ。

『遠回しなやり方は、俺の性に合わない』

『俺はフルスロットルで、単刀直入にいくのが好きだ。こそこそするのはごめんだね』

「それと、言い忘れていました」マイクに身を乗り出す。今さらこの狂気の沙汰を止める理由もないだろう?

「我が社、ハイバーズ・システムでは、コンピューターサイエンス学部の新卒者を対象とした採用選考を設けることにしました。興味のある学生は、担当チームか、この私に直接連絡してください」

『嘘だ』

『まあ、完全な嘘でもないが』

まだチームには相談していないだけで、彼らもこのホールにいる学生たちと同じくらい驚くだろう。ただ、目の前の学生たちのように歓声を上げて喜ぶことはないだろうが。

俺は聴衆に笑顔を向けると、学長や他の教授たちが立っている方へと向かった。

「素晴らしいスピーチでしたよ、ダコタ君。若者たちを大いに鼓舞する内容でした。それに、採用の告知は最高の締めくくりでしたな」教授の一人が言った。

「光栄です、先生。大学と学生のためなら、喜んで」俺は丁寧な笑みを浮かべて答える。

正直なところ、俺がここに来た本当の理由は、この学生たちや式典とは何の関係もない。すべては、彼女のためだ。

俺を人生からブロックした女。頭から離れない女。この指の間からすり抜けていった女。

俺はなんて馬鹿だったんだ。彼女を惚れさせるのに七日、この三年間ずっと恋していたと伝えるのに七夜もあったのに。

それを、復讐心に駆られた俺は、めちゃくちゃにぶち壊しちまった。

『だが、大丈夫だ。俺はそれを正しに来た』

『たとえ膝を屈してでも、彼女を取り戻してみせる』

AI分野でのインターンシップ・プログラムに興味のある学生と少し話がしたいからと、コンピューターサイエンス学部の学位授与を手伝わせてほしいと学長に申し出た。

『真っ赤な嘘だ……』

だが、恋と戦争では手段を選ばないと言うだろう。

彼女への復讐のためならあらゆる一線を越えてきた俺だ。今度は、彼女の心を手に入れるためなら、どんな境界線も目に入らない。

彼女が俺を望んでいないのは分かっている。だが、男はいつでも乞い願うことができる。だろ?

『――あるいは、策略を巡らすか。使える手は何でもありだ!』

俺はネクタイを直し、名前が呼ばれ始めると共に学長と並んで一歩前に出た。

「アリソン・J・アダムズ」

卒業ガウンと角帽を身につけた女子学生が、興奮に満ちた表情で歩み寄ってくる。俺はプロフェッショナルな笑みを浮かべ、穏やかに握手を交わした。「おめでとう」

学位記を手渡し、義務的な写真撮影のためにカメラに視線を送る。

『笑顔。カシャッ。次』

「ジョン・M・アンドリュー」

また握手、また丁寧な笑み。だが、俺はただ笑って学位記を渡すためにここにいるわけじゃない。俺には個人的な使命がある。

『ブロックを解除させ、彼女の心をハックするミッションだ!』

次から次へと名前が呼ばれ、俺はオートパイロットのように行動を繰り返す。握手。学位記を渡す。カメラに笑み。

「ローズ・A・デイミソン」

聞き覚えのある名前に、俺は機械的な動きから我に返り、顔を上げた。満面の笑みでこちらへ歩いてくるローズの姿が見える。彼女は、俺が話したことのあるデイミソン家の中でも、いつも陽気で礼儀正しい人物だった。

「おめでとう、ローズ」俺も笑顔を返し、優しく握手をする。

「ありがとう、ダコタ」彼女はきらめくような笑みを返してきた。

俺は彼女に学位記を手渡し、二人でフラッシュを待ってカメラの方を向く。

「君の兄さんは来ているのか?」ほとんど聞こえないくらいの小声で、俺は彼女に尋ねた。

「ふぅん」彼女は静かに鼻を鳴らし、もう一度微笑んでから歩き去った。

思った以上に視線が自分に注がれていることに気づき、俺は背筋を伸ばし、肩を張って姿勢を正す。

名前が次々と呼ばれていく中、俺は完璧なパフォーマンスを続けるが、時計の針が進むにつれて、一秒ごとに焦燥感が増していく。彼女はいつ来るんだ?

「メルビン・S・マシューズ」

『おいおい、まだMかよ? Sまであとどれだけかかるんだ?』

「サー、あなたとあなたの会社の、大ファンなんです」目の前の男が、俺が丁寧な笑みを浮かべて学位記を手渡すと、熱狂的に言った。

「あなたのもとで、ハイバーズで働きたいんです。僕にとって、夢が叶うようなものです」彼が興奮して付け加える。俺は頷き、彼の背中に軽く手を添えてそっと前へ押し出した。先へ進めという、明確な合図だ。

『よし。次!』

学位記を渡し続ける間も、内側でふつふつと湧き上がる苛立ちは抑えがたくなっていく。過ぎていく一分一分が永遠のように感じられ、俺はキレる寸前だった。

『俺も、俺の中の獣も、彼女に会いたくて飢えている』

「イーサン・H・ストーン」

その名を聞いて、俺の視線が動いた。『エマラの兄!』

あの違法薬物事件の際に、彼女が俺の名前を出すことで守ろうとした男だ。

乱闘の場では一度も見たことがなかったが、彼がステージに上がった瞬間、その体格から鍛えていることが見て取れた。

イーサンはポジティブなオーラを放ち、自信に満ちた足取りで俺のもとへ歩いてくる。俺は手を差し出し、固い握手を交わした。

「おめでとう、イーサン」俺はプロフェッショナルな笑みを浮かべて言った。

「ありがとうございます、ブラック氏。ようやくお会いできて光栄です」彼は心からの礼儀正しさで応じる。俺たちは二人でカメラの方を向き、俺は記念の写真を撮るために、さりげなく彼の方に手を置いた。

『こいつが将来、俺の義弟になるかもしれないんだからな!』

「それで、あのオファーについてはどう決めたんだ?」彼の今後の計画に興味を惹かれ、俺は尋ねた。

「ええと、彼女と一緒にMBAを取得することに決めました」彼は気まずそうに視線を逸らす。「大学も、ローンも、すべて決まっています。その後、またお会いできるかもしれません」

「もちろんだ。ハイバーズのドアはいつでも開いている」彼の成熟した考えに感心し、俺は微笑んだ。

「お時間をいただき、ありがとうございます、ブラック氏」彼は真の紳士のように礼を言って歩き去り、俺の中に敬意にも似た感情を残していった。

誰かに使われるのではなく、自らを高め、知識を得ることを選んだ彼の姿勢が気に入った。『賢い選択だ』

「エマラ・S・ストーン」

彼女の名前がホールに響き渡った瞬間、俺は入り口を振り返った。俺の耳が聞きたくてたまらなかった、その名前。

心臓が胸の中で跳ね、彼女に会うのだという静かな合図を送ってくる。

今この瞬間に空気は必要ない、ただ彼女の一瞥があればいいとでも言うように、俺は息を止める。

そして、彼女がスローモーションで歩み寄ってくる。

燃えるような赤い髪が、炎のように肩にこぼれ落ち、その上には角帽が飾られている。黒いガウンが、濃い影のように背後で揺れていた。

一目見ただけで、彼女は学位を受け取るために天から降りてきた戦いの女神のようだった。

エマラが地獄さえも焼き尽くしそうな眼差しで俺に向かって歩いてくるにつれ、耳をつんざくような鼓動が聞こえる。

『クソッ』

心臓の鼓動が速まり、俺は汗ばんだ手をズボンで拭う。まるで彼女に触れる前に、この手を清めなければならないとでも言うように。

ああ、最後にこんなに緊張したのがいつだったか、思い出せない。

『一度も』

『これまでは、一度もなかった』

俺は無理やり肺に空気を送り込み、彼女がその肌に触れるという祝福を与えてくれることを祈りながら、手を差し出した。

「おめでとう、エマラ」

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