第7章
まさか渡辺誠人の家族が、私の新しい住まいを突き止めてくるとは思わなかった。
「お願いします、奈々子さん、どうかあの子に一度会ってやってください……」
私の目の前で、渡辺誠人の母親が土下座せんばかりに頭を下げている。私はその場で立ち尽くし、どうすることもできなかった。憔悴しきったその中年女性の目の下の隈は、まるで墨でも滴り落ちてきそうだ。
「誠人はもう三日も何も食べていないんです。このままでは命に関わると、お医者様が……」
私は彼女を冷ややかに見つめて言った。
「それが、私に何か関係ありますか」
「あなたに会えなければ、もう何も口にしないと。うちの子が許されないことをしたと分...
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