七年間もつれた彼のSNS裏アカは、全部あの人のためのものだった

七年間もつれた彼のSNS裏アカは、全部あの人のためのものだった

渡り雨 · 完結 · 22.7k 文字

248
トレンド
807
閲覧数
77
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

高校の同級生、渡辺誠人にずっと片想いをしていた。

そんな彼に言われるがまま、私は体を許してしまった。

それから数年、私たちは曖昧な関係をずるずると続けてきた。

友人たちは口を揃えて言う。「彼、あなたに一途だよ。その愛を大切にしなきゃ」と。

でもある日、彼のSNSの裏アカウントを見つけてしまった。

数えきれないほどの投稿。そのすべてが、手の届かない『高嶺の花』への恋慕で埋め尽くされていた。

その時、ようやく全てを悟った。

この長くて不毛な数年間、彼は私に体を、そして他の誰かに心を捧げていたのだと。

チャプター 1

 誠人は焦ったように私の服のボタンを解いていく。

 名古屋への出張から帰ってきたばかりだというのに、彼はスーツケースを開けることすらせず、私を玄関の壁に押し付けた。

「奈々子、会いたかった」

 彼の呼吸は荒く、唇が耳元に寄せられ、掠れた声が響く。

 いつもの彼らしくない。

 誠人はいつも自制的で優しいのに、今日の動きは乱暴で焦燥感に満ちていた。

 一瞬、脳裏に疑問がよぎったが、すぐに彼のキスに掻き消された。

 事の後、ベッドに横たわっていると、睡魔が襲ってきた。

 誠人は私の髪を優しく撫で、その眼差しは穏やかだ。

 私が眠りに落ちる寸前、彼のスマートフォンからLINE特有の通知音が鳴った。

 隣のマットレスがわずかに沈み、そして元に戻るのを感じる。

 目を開けると、誠人がベッドの端に腰掛け、スマートフォンを食い入るように見つめ、眉をひそめていた。

「どうしたの?」

 と私は尋ねる。

「会社で急用ができた。先に寝てて。待たなくていいから」

 彼の口調は平然としていたが、その瞳には私には読み取れない感情が揺らめいていた。

 彼はすぐに服を着て出て行った。

 寝室のドアが閉まり、暗闇の中で十分ほど横になっていると、不安が梅雨の湿気のようにまとわりついて離れない。

 私はスマートフォンを手に取り、誠人の会社の夜間警備員の番号に電話をかけた。

「渡辺さん?いえ、今日は誰も残業していませんよ。オフィスはもう施錠済みです」

 警備員の答えに、私の心は沈んでいった。

 彼は嘘をついた。

 彼がどこへ行ったのか、なぜ嘘をつく必要があったのか、私にはわからなかった。

 翌朝、誠人は表参道の有名店の和菓子を手に帰ってきた。その店は出前注文を受け付けておらず、直接買いに行かなければ手に入らない。

「よく眠れた?」

 彼は微笑みながら尋ねる。昨夜の不在などなかったかのように。

「まあまあ」

 私は和菓子を受け取る。

「昨日の夜はどこに行ってたの?」

「会社の用事を済ませてから、ついでにお前が好きな和菓子を買いに並んでたんだ」

 彼の笑顔は不自然なほどに輝いていた。

「富士山の山頂の雪だって、奈々子のためなら取ってくるよ」

 甘い言葉は蜂蜜のようだったが、私はそこに微かな苦味を感じ取っていた。

 ひとまず疑念は胸の内に収めたが、心の不安は拭い去れなかった。

 私と誠人が付き合って、もう七年になる。大学を卒業した年に出会い、居酒屋で酔った彼に絡まれ、翌日謝罪に来られたのが始まりだった。

 あの時の彼の眼差しは真摯で、断ることができなかった。

「誠人ってああいう一途なところあるから、あなたがいなくなったらどうやって生きていくのかしらね?」

 親友の佐藤杏はかつて彼をそう評した。

 だが七年が過ぎても、誠人が結婚を切り出すことはなかった。

 私が探りを入れるようにその話題を出すたび、彼は決まってこう言うのだ。

「会社で昇進して、仕事が安定してからプロポーズさせてくれ」

 ソファに座り、スマートフォンに目を落として口角を上げている彼を見つめる。

「何見てるの?」

 好奇心から尋ねた。

「猫の動画だよ。可愛い」

 彼の返事はあまりにも早すぎた。

 私が近寄ると、彼はすぐに画面をロックした。けれど、私はもう見てしまった。あのアイコン――ツイッターだ。

 誠人はかつて、SNSは一切やらないと言っていた。

 また一つ、嘘が増えた。

「ちょっとお風呂入ってくる」

 彼は立ち上がり、スマートフォンを無造作にテーブルの上に置いた。

 私はそのスマートフォンを凝視し、心臓が速く脈打つのを感じる。

 すべきではない。でも、疑念はもう桜の季節の花粉のように、息苦しいほどに私を苛んでいた。

 私は彼のスマートフォンを手に取り、彼の誕生日をパスワードとして入力すると、画面のロックが解除された。

 ツイッターのアプリは、目立たないフォルダの中に隠されていた。

 それをタップすると、「残りの星」というアカウント名が画面に現れた。

 私はその名前を記憶に刻み、何事もなかったかのようにスマートフォンを元の場所に戻した。

 翌朝、誠人が会社へ行った後、私は仕事部屋に籠もり、自分のパソコンを開いた。

 一時間近くかけて、アイコンとIPアドレスから、その裏アカウントが間違いなく誠人のものであることを突き止めた。

 アカウントには数千件のツイートがあり、そのすべてがある一人の人物を中心に綴られていた。

 二〇一七年六月のツイート――『俺は他の女と寝た。でも、先に裏切ったのはお前だろ』

 誠人が居酒屋で酔って私に絡んできた時期と一致する。

 二〇一八年九月――『お前は俺がお前一筋だと思ってんのか。滑稽な話だ』

 誠人が銀座で私に告白した、まさにその日だった。

 二〇二一年八月――『よくもまあ結婚できたもんだな。狂ってるのか!』

 その月、誠人は異常なほど乱暴で、私はそれが原因で熱を出し、病院に運ばれた。

 私は震える指で最新のツイートを開いた。

『少年時代に愛した人は、永遠に続く』

 桜が舞い散る写真が添えられていた。

 写真には白いワンピースを着た女性が写っており、その横顔は優しげだった。

 私は彼女に見覚えがあった――佐藤宇奈美。誠人の高校時代の同級生だ。

 七年間、誠人の心は私のものだと思っていた。だが今、すべてが彼の偽りだったのだと悟った。

 彼の心は、一度も本当に私のものになったことなどなかったのだ。

 ただ、それほどまでに二人の想いが深く、縺れ合っているというのなら。

 じゃあ、私は? 私は一体、何だったというの?

最新チャプター

おすすめ 😍

空気のようだった妻が消えた日、俺の空っぽな日常が剥がれ落ちる

空気のようだった妻が消えた日、俺の空っぽな日常が剥がれ落ちる

38.3k 閲覧数 · 連載中 · わたあめ
妻の存在は、いつだって当たり前で、ただそこにあるだけのものだと思っていた。
だが、帰宅した俺を迎えたのは、もぬけの殻になったクローゼットと、机の上に置かれた離婚届だけだった。
三年間、彼女は何を思い、何に耐えていたのか。
初めて向き合った彼女の不在は、何よりも鋭く俺の心臓を抉る。
失って初めて気づく、俺を誰よりも愛していたはずのその手。
タイムリミットが迫る中、俺は彼女という「唯一の場所」を取り戻すために奔走する。
——もう遅いのか、それともこれはやり直すための罰なのか。
舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

51.9k 閲覧数 · 連載中 · 桜井 ゆい​
18年間、自分が実の娘でないとは知らずに生きてきた。ある日、荷物をすべて玄関の外に放り出され、街角に立ち尽くす私の前に現れたのは、噂では極貧だという「生家」から迎えに来た、見たこともない「兄」。

ところが、その兄が乗ってきたのはトラクターだった。

ガタガタと揺れるトラクターがたどり着いた先は、まるで古城のような大邸宅。そこで私は思い知る。本当の家族のもとに引き取られた私は、貧しくなるどころか、前よりずっと裕福になっていたのだ。

……だが、ちょっと待ってほしい。なぜ私には突然、婚約者というものが存在するのか。しかもその相手は、私の大学の教授だという。誰か、説明してくれないだろうか。
離婚後、奥さんのマスクが外れた

離婚後、奥さんのマスクが外れた

331k 閲覧数 · 連載中 · 来世こそは猫
結婚して2年後、佐藤悟は突然離婚を申し立てた。
彼は言った。「彼女が戻ってきた。離婚しよう。君が欲しいものは何でもあげる。」
結婚して2年後、彼女はもはや彼が自分を愛していない現実を無視できなくなり、過去の関係が感情的な苦痛を引き起こすと、現在の関係に影響を与えることが明らかになった。

山本希は口論を避け、このカップルを祝福することを選び、自分の条件を提示した。
「あなたの最も高価な限定版スポーツカーが欲しい。」
「いいよ。」
「郊外の別荘も。」
「わかった。」
「結婚してからの2年間に得た数十億ドルを分け合うこと。」
「?」
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

321.3k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」
追放された偽物の娘、その正体は最強でした

追放された偽物の娘、その正体は最強でした

820.2k 閲覧数 · 連載中 · ゲゲゲ
「本物の娘が見つかった。お前はもう用済みだ」
あの子が現れたその日、私は『偽物の娘』として家を追い出された。
渡されたのは、わずかな小銭と地方行きの片道切符だけ。
さらに婚約者は私をゴミのように捨て、その日のうちに『本物』であるあの子にプロポーズした。

……上等じゃない。せいぜい勝った気でいればいいわ。
だって彼らは、私の【本当の顔】を何一つ知らないのだから。

名門病院が見放した命を救う『天才外科医』。
オークションで数億円の値を叩き出す『伝説の画家』。
裏社会の闘技場で無敗を誇る『影の女王』。
そして――彼らの全財産すら小銭に思えるほどの『真の巨大財閥の後継者』であることを。

今さら元婚約者が土下座で許しを請おうと、本物の娘が嫉妬で狂いそうになろうと、もう遅い。
かつて私に婚約破棄の書類を叩きつけた冷酷で傲慢なCEOでさえ、今や何かに取り憑かれたように私を追い回し、「もう一度だけチャンスをくれ」とすがりついてくる始末。

私を捨てて、自分たちの人生を『アップグレード』したつもり?
笑わせないで。最初から、圧倒的に上の存在だったのは私のほうよ。
追放された偽令嬢、実は超財閥の真の令嬢

追放された偽令嬢、実は超財閥の真の令嬢

146.5k 閲覧数 · 連載中 · あざ鳥
「お前みたいな偽物の令嬢、さっさと山奥に帰れ!」

孤児だと判明した途端、彼女は養父母から冷酷に家を追い出され、婚約者も本物の令嬢へと乗り換えた。
彼らは、彼女がこれからド田舎で悲惨な生活を送るのだとあざ笑っていた。

しかし、彼女を迎えに来た実の家族は、なんと世界を牛耳る超巨大財閥の一族だった!
さらに、彼女自身もただの小娘ではない。その正体は、世界の医学界が平伏す伝説の天才医師だったのだ。

実家に戻るや否や、彼女は神業のようなメス捌きで次々と難病患者を救い、医療界の権威たちを圧倒していく。その圧倒的な実力に、誰もが恐れる冷酷なトップ御曹司でさえも彼女に惹かれ、無限額のブラックカードを差し出す始末。

一方、彼女を追い出した養父母の家業は倒産寸前に陥り、元婚約者も彼女の本当の姿を知って絶望の淵に立たされていた。
彼らが泣きついて許しを乞うても、彼女は冷たく言い放つ。

「今さら後悔しても、もう遅いわ」
極品の入り婿

極品の入り婿

2k 閲覧数 · 連載中 · 佐藤製作所
彼が財産を相続して戻ってきた時、かつて彼を見下していた人々は彼の前にひざまずくしかなかった。
マフィア姫の帰還

マフィア姫の帰還

56.4k 閲覧数 · 完結 · Tonje Unosen
タリアは何年ものあいだ、母と義理の妹、そして継父と暮らしてきた。だがある日、ついにそこから逃げ出すことに成功する。

ところがその直後、自分にはまだ外に家族がいるのだと知る。そして本当に自分を愛してくれる人たちが大勢いることも――そんなものは今まで感じたことがなかった。少なくとも、彼女の記憶にあるかぎりでは。

タリアは人を信じることを学ばなければならない。新しくできた兄たちにも、ありのままの自分を受け入れてもらわなければならないのだ。
監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

131.5k 閲覧数 · 連載中 · 鈴木楓花
監禁から1年。ようやく帰宅した今井心晴を待っていたのは、変わり果てた日常だった。
家族は心晴を探そうともせず、あろうことか姉の今井優奈のために盛大な誕生日パーティーを開いていた。
しかも、その横には心晴の元婚約者の姿が……二人は婚約していたのだ。
しかし、心晴はただの被害者ではなかった。
彼女は人知れず巨額の資産と強大なコネクションを築き上げていたのだ。
真実を知った心晴は、復讐の狼煙を上げる。
彼女が選んだ新たなパートナーは、なんと元婚約者の叔父だった。
「これからは私のことを『おばさん』と呼ぶのよ、優奈!」
社長の逃げた妊娠妻

社長の逃げた妊娠妻

25.7k 閲覧数 · 連載中 · ユイ
川崎佑哉は上半身裸のまま、江原安美の上に覆いかぶさり、大きな手で彼女の柔らかな胸を撫で上げた。

江原安美は甘い吐息を漏らしながら喘いだ。「もう我慢できない…ちょうだい…」

川崎佑哉は彼女の体をうつ伏せにひっくり返し、ペニスを彼女の柔らかな臀部の間で前後に擦りつけた後、背後から一気に挿入した。

「江原安美、たとえ離婚しても、お前は一生、俺の下で喘ぐしかないんだ。」


江原安美はまさか自分がいつか、夫・川崎佑哉と彼の愛人のために結婚指輪をデザインすることになるとは思わなかった。そしてさらに届いたのは、一通の離婚届だった。

彼女は迷わずサインし、彼への想いを断ち切り、妊娠検査の結果を隠して、海外へと旅立った。

その後、彼女は海外で大成功を収め、言い寄る男は数知れず。しかし彼は変わった。彼女に執着し、離れようとせず、目を赤くして「もう一度チャンスをくれ」と懇願した。

彼女の小さな宝物が飛び出して彼の前に立ちはだかり、腰に手を当ててこう言った。「ママに追いつきたいなら、まず列に並んでね!」
未熟

未熟

7.1k 閲覧数 · 連載中 · ほしの なお
結婚3周年の日、見知らぬ相手からのメッセージが私の命を救い、同時に完璧だった結婚生活を木端微塵に砕いた。夫は親友と不倫し、義母は犯罪組織を牛耳る黒幕だった。
嘘の巣窟に囚われた私は、冷徹で権力を持つ弁護士にすがり、復讐を誓う。妊娠の偽装、証拠集め――奴らをすべて破滅させてやる。
だが、私を導く謎の「見知らぬ人」はいったい誰なのか? そして、その弁護士が本当に求めているものとは――?
今さら跪いても遅い

今さら跪いても遅い

19.2k 閲覧数 · 連載中 · ショコラ風味
5年間の結婚生活を壊したのが、1通の親子鑑定書だとは夢にも思わなかった。

自分が手塩にかけて育てた息子は、夫が元カノとの間に作った子供だった。さらにあり得ないことに、父子は最初からその事実を知っており、結託して彼女に隠していたのだ。

それだけではない。彼女はドアの隙間から、夫の計画を親の耳で聞いてしまう。元カノが戻ってきたら、彼女を「体面よく」会社から退職させ、財産を一切渡さずに追い出し、5000万の「補償金」で済ませようというのだ。

5000万?彼女が一人で支えてきた会社で、彼女の金と人脉を使って夫の尻拭いをしてきた結果が、たったのそれだけ?

絶望した彼女は、自分のすべてを取り戻すと誓う。

恩知らずの息子? もう愛さない。初恋に狂う夫? 彼も消え失せろ。

だが、彼女が本当に離婚して完全に去ったとき、あの父子は再び彼女に家に帰ってきてくれと泣きついてきた!
「もう一度だけチャンスをくれ」

今度の彼女は、一瞥さえくれなかった。