第178章 よろしくお願いします、黒木奥さん

午後六時。

黒木蓮は別荘の前に立ち、しばし躊躇った末にドアを押し開けた。

その瞳は暗く、何を考えているのか読み取れない。

理性は、白石凛を諦めるべきだと告げていた。だが、長年抱き続けてきた執着は、彼女ただ一人に向けられているのだ。

彼女に自分の人生へと介入してほしい。たとえ何をせずとも、ただその姿を見ているだけでよかった。

カチャリ。

鍵が開く。黒木蓮が足を踏み入れた瞬間、料理の香ばしい匂いが鼻をくすぐった。その瞬間、胸の奥で何かが震えた。

かつて心の底で渇望していた光景が、今、現実のものとなっている。

「お帰りなさい。手を洗ってご飯にしましょう。最近、仕事はどう?」

白石...

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