第2章

彼女の体は強張り、瞳孔が収縮した。

神田ミユが送ってきたのは、一本の口紅の写真だった。

それはまさに先日、西園寺昴の休憩室で見かけたあの口紅だった。

白石凛は体の震えを必死に抑えながら携帯電話を拾い上げ、白く細い指で画面を叩いた。

聞きたいことは山ほどあった。

なぜ、父親が誰か分かるかと聞いてきたのか?

なぜ、あの口紅が休憩室にあったものと同じなのか?

なぜ、こんな写真を送ってきたのか?

神田ミユは一体何がしたいのか?

彼女はふっくらとした唇をきつく結び、迷った末に、入力しかけた詰問の言葉をすべて削除した。

神田ミユの得意技は離間工作だ。

長年、何度もその手口を見てきた。

それに、もし西園寺昴が本当に浮気をしているなら、この世に浮気をしない男など存在しないことになる。

彼らは二十年以上もの間、互いの人生を共に歩んできた幼馴染なのだ。

西園寺昴と神田ミユ、比べるまでもなく、彼女は無条件に前者を信じる。

白石凛はチャット画面を見つめ、その瞳に冷ややかな光を宿した。

かつて母は離婚後、彼女を連れて神田家に嫁いだ。

その翌年、神田ミユが生まれた。

彼女は幼い頃から長年、冷たい視線を浴び、「お荷物」扱いされ、神田ミユにいじめられ続けてきた。

母はいつも彼女に、我慢するように、神田家が自分たちを置いてくれている恩義を忘れないようにと言い聞かせてきた。

彼女はずっと耐えてきた。気に入ったヘアピンや人形といった小さなものから、大切なアクセサリーといった大きなものまで、すべて神田ミユに奪われてきた。

そして今、夫まで奪おうというのか?

笑わせる。

再び携帯電話が振動し、彼女の思考を遮った。

西園寺昴からのメッセージだった。

『凛、家政婦に君の好きな栄養スープを作らせたよ。飲んだら少し眠るといい。今日は早めに仕事を切り上げて帰るから、また頑張ろうな』

白石凛の頬が微かに赤らむ。行間から滲み出る気遣いと愛情が、彼女の最後の一抹の疑念さえも打ち消した。

彼女は口元に幸福な笑みを浮かべ、一言返信した。『分かったわ』

白石凛は携帯電話を置くと、心の中で密かに日数を数え、バスルームへと向かった。

便座に座り、妊娠検査薬を強く握りしめる。ゆっくりと二本の線が浮かび上がった瞬間、彼女は嬉しさのあまり泣き出しそうになった。

彼女は自分の口を手で覆い、心の中は幸福感と、ついにこの時が来たという安堵感で満たされた。

長年の体質改善が実り、ついに二人の子供を授かったのだ!

以前、生理が一ヶ月遅れたことがあった。

二人とも良い知らせだと期待したが、病院で検査した結果、ただのホルモンバランスの乱れだと判明した。

あの時の喜びがぬか喜びに終わった感覚、そして西園寺昴の顔に一瞬浮かんだ失望の色、それでも彼が逆に自分を慰めてくれたことを、彼女は忘れていない。

検査薬の結果が不正確であることを恐れ、白石凛は大急ぎで病院へ向かった。

医師は彼女の向かいに座り、検査報告書を見て力強く頷いた。

「おめでとうございます、白石さん。ついに妊娠されましたよ!」

白石凛の張り詰めていた心が完全に解き放たれた。彼女は興奮して言った。

「先生、ずっと治療に協力してくださって、本当にありがとうございました」

「お礼なんていりませんよ」

医師が言い終わるか終わらないかのうちに、突然西園寺昴から電話がかかってきた。

彼の声には隠しきれない焦りが混じっていた。彼はオフィスの窓際に立ち、眉をひそめていた。

「凛、どうして急に病院へ? どこか具合でも悪いのか? 今すぐそっちへ行こうか?」

白石凛は片手で検査報告書を握りしめ、危うく事実を口走るところだった。

だが、一週間後は西園寺昴の誕生日だ。このニュースを誕生日プレゼントとして彼に贈りたい。

白石凛は適当な理由をつけて誤魔化した。

「さっき検診に来たんだけど、やっぱりまだ良い知らせはなかったわ」

西園寺昴は優しく慰めた。

「焦ることはないよ。俺たちにはいつか必ず子供ができるさ」

「うん」

白石凛は返事をし、バッグを持って外へ歩き出した。

「凛」

西園寺昴が突然、再び口を開いた。どこか躊躇いがちな声だった。

白石凛は不思議そうに尋ねた。

「どうしたの?」

電話の向こうから、西園寺昴のためらいがちな声が響く。

「もし、君によく似た子供を養子に迎えるとしたら、君はその子を愛せるかい?」

白石凛は迷わず答えた。

「もちろんよ。でも、やっぱり心の中では私たち二人の子供が欲しいわ」

そう言う彼女の口角は、自然と吊り上がっていた。

手元の検査報告書の文字一つ一つが幸福に満ちており、まるで雲の上に放り投げられたような気分だった。

彼女は以前から、子供のために何百もの名前を考えていた。

そろそろ一つを選ばなければ。

男の子だろうか、女の子だろうか。自分に似ているだろうか、それとも西園寺昴に似ているだろうか?

だが、どちらにせよ、彼女はこの子に全ての愛を注ぐつもりだ。

昴もずっと心待ちにしていたのだから、きっと大喜びして、良い父親になるに違いない。

西園寺昴の瞳に暗い影がよぎった。

彼は無意識に引き出しから煙草を取り出そうとしたが、妊活中であることを思い出し、手を引っ込めた。

電話越しでも、白石凛の期待に満ちた眼差しが想像できた。

彼は一瞬沈黙し、ゆっくりと口を開いた。

「凛、もしある日、俺が過ちを犯したとしても、君は許してくれるか?」

白石凛は反射的にあの口紅のことを思い出した。

だが、その考えが浮かぶや否や、彼女はそれを打ち消した。

あり得ない。

考えすぎだ。

西園寺昴は彼女と神田ミユの間の確執を知っている。もし万が一浮気をするとしても、神田ミユを選ぶはずがない。

白石凛は戸惑いながら尋ねた。

「過ち? 何か私に対して後ろめたいことでもしたの?」

西園寺昴はきっぱりと言った。

「いいや。俺は結婚式で誓ったんだ、永遠に君を裏切らないと」

白石凛は口元に笑みを浮かべ、澄んだ声で言った。

「うん。でも、もしあなたが過ちを犯したなら、その内容によるわね。もしすごく深刻なことなら、私はあなたの元を去って遠くへ逃げるわ。二度と会わない」

西園寺昴の瞳に偏執的な光が走り、携帯電話を握る手に一層力がこもった。

「絶対にそんな日は来させない」

白石凛は笑った。

「分かったわ」

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