第250章 黒木蓮の様子がおかしい

相井新一は、バックミラー越しにこっそりと主である黒木社長の様子を窺った。

てっきり不機嫌になるかと思いきや、黒木蓮の口元は微かに、だが確かに綻んでいるではないか。

(何かがおかしい!)

黒木蓮が奥様――白石凛と一緒になってからというもの、彼の様子は日に日に常軌を逸しつつある。

「社長、やはり出張シェフを手配しましょうか?」

相井は恐る恐る尋ねた。

何しろ、黒木が抱えている食材の下処理は、素人には少々ハードルが高い代物ばかりだ。

「いや、いい。俺がやる」

黒木は間髪入れずに断った。

「凛はコンクールの準備中だ。俺が精をつけてやらないとな」

何気ない口調で、彼はそう言った。

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