第27章 満足のいくお礼をあげる

嶋村良三は彼女の表情を盗み見て、戦慄を覚えた。

「奥様、実は社長は……」

「送ってくださるんじゃなくて?」

白石凛の顔色は冷静そのもので、先ほどの光景など目に入らなかったかのようだった。

ただ、その蒼白な顔色だけが、彼女の胸底に渦巻く真の感情を暴露していた。

その言葉に、嶋村良三は思わず彼女を見やった。

奥様は、変わってしまったようだ。

以前の奥様は、社長の前では情熱的な薔薇のようだった。瞳には濃密な愛があふれ、時には愛らしいわがままも見せていたというのに。

だが今、その瞳に宿っているのは冷徹なまでの静寂だけだ。

嶋村良三に守られながら地下駐車場へと向かい、白石凛がマスクを...

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