第277章 誘拐

病院から出てきた白石凛は、どこか沈んだ面持ちだった。

「もしかしたら、玉島佳美にとっては、これが救いだったのかもしれないわね」

黒木蓮はそっと彼女の手を握り、慰めるように言った。

「どういう意味?」

白石凛は首を傾げ、隣を歩く黒木蓮を見上げた。

「玉島佳美は重い双極性障害を患っていたんだ。ただ、玉島家の人間が誰もその事実に気づいていなかっただけでね……」

黒木蓮は静かに口を開いた。

そのことを、彼は随分前から把握していた。

危機的状況下で黒木家当主の座を引き継いで以来、黒木蓮は港エリアに名を連ねる全名家の内情を徹底的に調べ上げていた。当然、斜陽の玉島家も例外ではない。

そう...

ログインして続きを読む