第50章

「彼女の戸籍上の夫でなければ、今ここで俺と口をきく資格があると思っているのか?」

男の声は極めて冷淡で、背筋が凍るような戦慄を覚えさせた。

西園寺昴は信じられないといった面持ちで、黒木蓮の瞳の奥に揺らぐ氷のような冷徹さを見つめた。それは、まともな人間の抱く色ではなかった。

「黒木蓮、忠告しておくが、ここは海都だぞ」

「それがどうした?」

黒木蓮は手にしたナイフに視線を落とし、薄ら笑いを浮かべた。

「俺が貴様を……西園寺家ごときを眼中に置いているとでも?」

「凛は君のような人間を好きにはならない。永遠にな」

西園寺昴は拳を固く握りしめ、顔色を蒼白にさせた。

まただ、この感覚。...

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