第59章 黒木蓮と踊る

港エリアに構える黒木家は、古くからの名門だ。前世紀の古き良き建築様式を残すその屋敷は、この街で最も地価の高い一等地に鎮座している。

白石凛は黒木蓮の育ちが良いことは知っていたが、実物を前にして、自分の認識がいかに浅かったかを思い知らされた。

かつて彼女は黒木蓮に対して、まるで互いに領分を侵さない王同士のように振る舞っていた。それを彼がずっと耐えていたのだとしたら……なんと度量が広いことか。

黒木蓮は車を降りなかった。窓を開け、ただ無言でその光景を見つめている。

本家の門を出入りする車は多い。

長い沈黙の後、黒木蓮は窓を閉めた。

白石凛は不思議そうに尋ねた。

「黒木蓮、降りてみな...

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