第64章 もう自分を騙すな

白石凛は、何のためらいもなく通話を切った。

以前の彼女なら、離婚という決断に揺らぎ、苦しみ抜いただろう。それは西園寺昴が自分を愛していると信じていたからであり、愛しているがゆえに、子供という存在によって自分を傷つけたのだと思っていたからだ。

だが今、その苦しみは薄らいでいた。彼女が好きだったあの頃の西園寺昴は、すでに思い出の中だけの住人になってしまったのだと、ようやく認めることができたからだ。

彼女の愛が、西園寺昴という人間に金メッキを施していたに過ぎない。

桜の樹の下に立てば、誰だって美しく見えるものだ。

「愛」という名のフィルターがあったからこそ、彼女は心の底で彼に対して猶予を...

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