第107章 衝突

黒薔薇が口を閉ざした刹那、廊下から重苦しい足音が押し寄せてきた。金属と金属がぶつかり合う冷たい音が、閉塞した空間に不快なほど響き渡る。

明らかに伏兵だ。取引だの十分間の猶予だのは、氷室龍一と綾瀬美月を確実に葬るための時間稼ぎに過ぎなかったのだ。

「下がれ!」

氷室龍一の反応は雷火の如く速かった。銃を手にした暴徒の影が入り口に見えた瞬間、彼は鋭く叫び、傍らにあった重厚な無垢材の作業台を蹴り倒す。

轟音と共に倒れた作業台は、綾瀬美月と井野千夏を庇う即席の遮蔽物となった。

同時に手首を返せば、その掌には奇妙な形状のコンパクトガンが握られている。彼は視線すら向けず、音と感覚だけを頼りに引き...

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