第132章 異変

すべての手配が整うと、綾瀬美月は綾瀬陽を連れ、氷室龍一と共にメキシコ行きのプライベートジェットへと乗り込んだ。

機体が雲海を抜け、カンクン国際空港に降り立つと、熱帯植物特有の甘い匂いを含んだ湿った海風が頬を撫でた。それは、母国の肌寒い秋とは対照的な空気だった。

突き抜けるような青空の下には、どこまでも続く白い砂浜と、ターコイズブルーのグラデーションを描くカリブ海が広がっている。

氷室龍一の仕事ぶりは相変わらず迅速で、雷の如く鋭い。

だが、ひとたび仕事を離れれば、彼はその意識を完全に美月へと向けてくれた。

氷室龍一は多くを語らない。だが、その視線は常に彼女を追っていた。

道端の色鮮...

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