第133章 私はあなたの婚約者

病院の特別個室には、特有の消毒液の臭いが漂っていた。ブラインド越しに射し込む陽光が、磨き上げられた床の上に明暗の縞模様を刻んでいる。

橘奏太はベッドの背もたれに体を預けていた。額にはガーゼが巻かれ、顔色は紙のように白い。かつては全てを見透かしていたその瞳には、今や空白と拒絶だけが浮かび、さながら波一つない湖面のようだった。

そこへ、橘リカが現れた。

上品なシャネルのスーツに身を包み、あえて控えめに施した精緻な化粧。手には新鮮な百合の花束を抱え、しなやかな足取りで部屋へと入ってくる。

その表情には絶妙な塩梅で憂いと優しさが滲み、奏太に注がれる視線は、溢れんばかりの愛おしさに満ちていた。...

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