第142章 綾瀬美月がまたいい男を捕まえた

彼は、綾瀬美月が佐京教授にあることないこと吹き込んだのだと決めつけた。あるいは、教授が綾瀬美月の鬱憤を晴らすために自分たちを拒絶したのだと。

突然の言いがかりに、佐京潤は呆気にとられたように眉を顰めた。

「綾瀬さん? どこの綾瀬さんだ? 彼女と何の関係がある」

彼は門前での一悶着など知る由もない。

見かねた助手が歩み寄り、佐京の耳元で事の次第を短く囁いた。

事情を聞き終えた佐京潤の顔に、得心がいったという色が浮かぶ。そして次の瞬間、その中年男を見る眼差しは氷点下まで冷え込んだ。

生涯を芸術に捧げてきた彼は、こうした邪な心根や、他人に責任を転嫁して喚き散らす輩を何より嫌うのだ。

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