第163章 白石紀香

「何をするつもりですか!」

綾瀬美月は反射的に手を伸ばし、彼の腕を掴んで、その場に崩れ落ちようとする体を支えた。完全に膝をつくことこそ阻止したが、綾瀬和延の中腰の姿勢と、なりふり構わぬ哀願の表情は、周囲に強烈なインパクトを与えるには十分すぎた。

その光景は、ホールにいる大勢の招待客の目に焼き付いた。

周囲がどよめく。

完全に土下座したわけではない。だが、その卑屈な姿勢と必死の懇願は、実質的に跪いたのと何ら変わりなかった。

「おい、あれ……綾瀬和延が姪に頭を下げているのか?」

「噂は本当だったんだな。綾瀬美月が実権を握って、叔父さえも蔑ろにしているとは……」

「目上の人間にあそこ...

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