第167章 合意に達する

案の定、応答はない。

彼女は続けて綾瀬有美のプライベート携帯にもかけてみたが、結果は同じだった。

彼女は少しの間考え込み、氷室龍一に電話をかけた。

「龍一、有美が綾瀬和延に軟禁されたかもしれない……」

綾瀬家の屋敷、綾瀬有美の部屋。

彼女は窓辺に座り、外に広がる自由な空を見つめていた。音もなく涙が頬を伝い落ちる。

画材もデザイン画もすべて没収され、スマホも取り上げられた。外界との連絡は一切断たれてしまった。

世界には今、この豪奢な牢獄だけが残されているようだった。

『初音』での日々が脳裏をよぎる。美月お姉様とデザインについて議論した時の閃き、アトリエに響く布の衣擦れの音、作品...

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