第172章 親権を取り戻す

一方、綾瀬美月は、綾瀬陽の背中を優しく押して席へと向かいながら、心の中に小さなさざ波が立つのを感じていた。

まさかこんな場所で、あのような形で、佐京幸子の夫と遭遇するとは。

世界というのは、時に残酷なほど狭いものだ。

綾瀬陽の火傷は、綾瀬美月の献身的な看病のおかげで順調に回復していた。子供特有の旺盛な生命力が、痛みの記憶をすぐに追い払ってくれたようだ。

余計なトラブルを避けるため、綾瀬美月はここ数日、綾瀬陽を自宅で療養させ、自分も可能な限り在宅ワークに切り替えて付き添っていた。

その日の午後、不意にインターホンが鳴り響いた。

綾瀬美月がモニターを覗き込むと、思わず眉間に皺が寄った...

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